第17章 優しい嘘
風丸が花織を振ったという話は、サッカー部内で一瞬のうちに広がった。あれだけ公の場で風丸が別れを切り出したのだから、当然である。加えて、いつも一緒にいた二人が目すら合わせないのだから、誰もが不自然に思うだろう。きっと周りの噂と相まって、状況はすぐに明白になったはずだ。
花織はかなりショックを受けたのか、明らかに鬼道と風丸を避けていた。というか、風丸、鬼道の他にも用がなければ、決して直後一日二日は話をしようとしなかった。ここのところは泣きすぎのせいか赤く腫れた目で、ただひたすらに事務処理をしていることばかりだった。せめて話をするのは秋くらいのものだ。
だが、生まれた不和はそれだけではない。
鬼道の精神力は頗る強いものであるし、風丸も相応の覚悟をしていたからかは普段通りの調子あり、何も動じた様子を見せない。だが周囲はそうも行かなかった。
花織とは仲の良い友人であったにも関わらずマックスと半田……、ことにマックスの方は風丸にかなり肩入れしているようだ。花織に対して詰責や慰めの言葉すらなく、決して花織とは口を利こうとしなかった。
他……全く三人の内情を知らない人間は、あまり深く首を突っ込もうとはしない。きっとあの場での告白がどちらを味方するにも決定的な判断材料が欠けていて何を言う気にもなれないのだろう。いっても仕方のないことだ。だが、やはり被害はあるようでこの三人に対しては鈍感な人物、もしくは剛胆な者を除いては当事者に対し、話しかけづらいものがあるようだった。
……そして、批判でも傍観でもなく花織を心配してやまない者もやはりいる。事の仔細を知っていたものだ。秋、土門、春奈……、そして何よりの根源である風丸と鬼道の両人である。
ことに、彼女に想いを寄せる二人は現在自分から花織に話しかけられないような立場にありながらも、落ち込む花織へ頻りに視線を寄せていた。本当に、よほど心配なのだろう。周囲への協力は万全にし、彼女が何か発すれば即座に聞き耳を立てるほどだ。双方、過剰とも呼べるくらいである。