第17章 優しい嘘
「で、なんで花織とあんな別れ方したんだ」
「ちゃんと納得のいく説明をしてよね」
風丸を挟むようにして座る2人は早くも核心を突いた。風丸は一度目を伏せ、目の前に映る景色を見た。すでに日が落ちてあたりは暗くなり始めている。街灯がつくのも時間の問題だろう。そんなどうでもいいことを考えながら風丸は小さな声で呟いた。
「花織は、鬼道と一緒に居るほうがいいと思ったからさ。お前らも知ってるだろ、花織がずっと鬼道のことが好きだったって」
「花織が、そういったのか?」
半田が怪訝そうに顔を顰めた。風丸は静かに首を横に振る。
「花織は俺に気を使ってくれていたからそんなことは言わない。でもやっぱりわかるんだよ、花織がどうしても鬼道を見ずにはいられないって」
「でも鬼道を見てたからって、イコール好きに直結するわけでもないんじゃない?確かに花織は、過去に鬼道を好きだったのかもしれないけど今は違うと思う。花織が鬼道のことを切り捨てられなかったことは事実だけど、誰より好きだったのは風丸だと思ってる」
マックスが強く意志を孕んだ目で風丸を見る。珍しいな、と風丸は思いながらも穏やかな微笑は崩さなかった。
「そんなわけないだろ。花織、ずっと鬼道のことが好きだったんだぞ?」
「でも風丸が好きになったから最終的には付き合うことになったんじゃん、花織が風丸のことを好きになったんなら別れる必要なんてないよ」
ずきりと風丸の胸が痛む。もっと自分が傲慢で意志が固くあれたなら、花織を手放さなくてよかったかもしれない。でも自分が代わりでいいといったのだ、花織をこれ以上悩ませたくなかったのだ。俺が身を引けば彼女が幸せになれると思ったのだ。そして何よりも……これ以上一緒に居ると彼女への独占欲が今にも暴走してしまいそうで、気が狂いそうで嫌になった。