第17章 優しい嘘
「風丸くんは優しくて謙虚な人だから、きっと勘違いしちゃったんじゃないかな。花織ちゃんが本当は風丸くんと別れて鬼道くんと一緒に居たいんじゃないかって」
「そんなこと、ないのに……」
泣きじゃくりながら花織が呟く。秋は目を細めた。
器用じゃないといえば、花織も多分そうだ。人の感情については本当に不器用だと思う、優しすぎるとでも言うのだろうか。でなかったらこんな複雑な関係に持ち込めるわけがない。誰も傷つけたくなかったはずの彼女は、結局すべて傷つけることになってしまった。鬼道を傷つけたくない、風丸を傷つけたくない……、酷い言葉を掛けたくないという思いがこういう結果を生んでしまった。
「花織ちゃん」
秋は涙でぐしゃぐしゃな花織の顔を覗き込む。
「今はきっと気持ちが追い付かないだろうから、ゆっくりするのが一番だと思う。でも気持ちが落ち着いたら、自分を見つめなおしてみて?……花織ちゃんの中では、本当ははっきりしてるんだよね?私、気づいてたよ。花織ちゃんが一番大好きな人のこと」
「でも、私……」
「花織ちゃん」
秋の声が少し厳しくなる。ぎゅっと花織の肩を掴んだ手に力を込めて、またその声色にも意思を込めて、秋ははっきりといった。
「もう逃げてちゃだめだよ。時間が掛かっても答えを出して。……大丈夫、何を選んでも絶対に私は花織ちゃんの味方だから」
いまさらどうしようもないかもしれない。だが、花織がはっきりしない限りはこの三人の関係に決着がつくことは無いだろうから。