第3章 淡く、そして儚く
最近、風丸くんが何だかよそよそしい。
花織は不安げな面持ちで落ち着いた雰囲気で宮坂と話している風丸に視線を向ける。よく目が合うはずなのにどこにいてもすぐに逸らされてしまう。
もしかすると嫌われているのかもしれない……そう思っても眉間にしわを寄せ、悩んでいる風丸が花織は心配だった。
いや、それだけではない。風丸が花織に抱いた想いと同じように、花織の仲にも風丸と他の女の子が話してるのを見ると何か湧き上がる感情があった。それは花織が「あの人」に抱いていた感情に酷似していた。
あの人の存在が小さくなるのに対して風丸の存在がどんどん花織の中で大きくなっていく。恋心だろうか……いやそんなわけがない、認めたくない。花織は首を振る。
だって出会ってまだ一か月程度なのに、こんなに簡単に人を好きになってしまうものなのだろうか。違う……、きっと違うはずだ。何故なら私には、もう一年も前から想い焦がれている人がいるのだから。
だからこの気持ちはきっと何かほかの特別なもの、初めてできた陸上部のライバルに向けるもの。きっとそうに違いない。
***
しかし、最近は本当に話すこともめっきり少なくなった。花織は切なげにクラスメイトと談笑する風丸を見つめながらため息をつく。話しかけてもおどおどされてしまう。……やはり嫌われているのかもしれない。ずっとそんなことばかりを考えていた。
そしてそう思えば胸が締め付けられるように痛んだ。苦しくて、苦しくて、息ができなくなりそうになる。それは本当に¨あの人¨に抱いていた感情に似ていた。
もしかしたら……。
一瞬、そんなことが頭をよぎりそんなわけがない、と首を振る。なぜなら花織はまだあの人が好きだから。目を伏せれば今でも思い出せるあの人の姿も声も……。彼に掛けられたどんな酷い言葉でさえも。
「花織ちゃん?どうかしたの?」
唐突に掛けられた声にハッと花織が我に返ると、秋がオレンジ色のお弁当の包みを持って花織の前にいた。秋はいつも姉のような温かさで花織に優しく言葉を掛けてくれる。現に今も秋は優しい笑顔だった。
「ほら、お弁当食べよ!」
「……うん」
「花織!一緒食べない?あれ、木野じゃん」