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恋風

第17章 優しい嘘




「俺と、別れてほしい」
「……っ」

花織の目が大きく見開かれる。彼女が他にアクションを起こすよりも早く、ざわっと彼らの周囲が動揺したのがわかった。だが悟っていたとはいえ、一番衝撃を受けたのは花織だ。花織はただただ風丸を凝視している。

「どう……して……?」

何を言えばいいのかがわからなかった。風丸が別れを切り出す要因など考えれば思い当たる節ばかりなのだから。それでも、どうでもいい問いを返すほど花織はショックを受けていたのだ。

「もう、耐えられないから。本当は鬼道が好きでたまらない筈なのに、俺を好きになってくれようと躍起になっている花織をみるのは。ずっと好きだった鬼道への想いを、俺を気遣って諦めようとしているお前を、俺はもう見ていられない」
「そんなこと……!!」

花織が必死に首を振る。鬼道の想いに答えられなかったのは風丸を気遣ってなどではない。ただ単純に、花織が風丸を好きだったからだ。花織が2人に対しての想いに踏ん切りをつけられなかっただけだ。風丸が気負うことなど何もないのに。

「俺たちが初めて会った時から、お前は鬼道のことが好きだった。お前はずっとそう俺に言ってきたし、何度も鬼道を忘れられないから、俺を傷つける前に別れてくれって言ってただろう」
「でも私は……っ。私は一郎太くんと同情で付き合っていたわけじゃない。好きじゃなかったら付き合ったりしないよ……!!」

花織が、か細いながらに風丸に訴える。対して風丸は至極穏やかな声で言った。

「わかってる。俺は、ずっとお前のことを見てきたんだ。花織の想いなら誰よりわかってるつもりだ。だからさ、花織が俺よりも鬼道のことを気にかけてきたってわかるんだよ。でも俺はそれを責めるつもりはない。…………花織、俺言ったよな」

さらさらと風が風丸の髪を揺らす。花織の視界に今、鬼道はいなかった。花織が風丸だけを見つめて風丸の元へ歩み寄ろうとしたが、風丸は花織が歩み寄った分だけ彼女から距離を取った。
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