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恋風

第16章 最後の悪あがき




"花織が惚れるのもよくわかる。単純に、鬼道のサッカーは凄い"

ハーフタイム、風丸はベンチに戻りながら難しい顔をしていた。

前半、雷門イレブンが薄々感づいていたように、全員のプレーはバラバラだった。しかし、そんなボロボロのプレーをするイレブンの中で新参者の鬼道は、チームに入って15分も経たないと言うのに、それを立て直してしまったのだ。

天才ゲームメイカーの名は伊達ではない。だからこそ、風丸は複雑だった。なぜならそれは、風丸には成し得ない技だったからだ。ちらりと自分の後方を歩く鬼道を風丸は盗み見る。

今まで敵対していたチームに彼が入ってから45分、馴染んでいるとは言えなくても、鬼道は堂々と意見を言ってのける。普通の人間ではできないことだろう。少なくとも風丸にはできない。

"悔しいけど、俺が鬼道に勝る面なんてない"

「一郎太君、どうしたの?」

突然掛かった花織の声にハッと風丸が我に返る。俯いていた顔を上げて花織の顔を見た。花織は思い悩む風丸のために、心配そうに眉を寄せていた。

「花織……」
「大丈夫?どこか痛いの?」

自分を案ずる花織を見て風丸はどうしてか虚しさを覚える。自分のために、鬼道をおいて花織は来てくれたのだろう。風丸は取り繕った笑みを浮かべた。

「何でもない。……少し、考え事をしていただけだ」
「なら、いいんだけど……」

風丸にボトルとタオルを渡しながら、花織が浮かない顔のまま笑った。風丸はそんな彼女の態度に疑問を抱く。彼女はどこか落ち着かない様子であった。

どうしたのか、風丸が花織に問い返そうとした時だった。びくっと花織の肩が一瞬震える。彼女のすぐ後方では、円堂と鬼道が何やら話をしていた。……どうやら花織は鬼道を避けているのらしい。そして、それはきっと彼がそろそろ自分に答えを催促するだろうと悟っていたからだった。
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