第16章 最後の悪あがき
「花織先輩……!お兄ちゃん……、帝国学園が……10対0で世宇子中に、完敗しました……!!」
刹那、部室内に戦慄が走る。ぞわりと臓腑を掴まれたかのような感覚が花織の身体を包んだ。
――――――鬼道さんが、そんなに圧倒的な大敗を……?
自分でも表情が歪んだのがよくわかる。それくらい、衝撃的な言葉だった。隣に立っている風丸も花織と同じように驚いていることも火を見るより明らかな事だった。
「見たこともない必殺技が、次々に繰り出されて……。大事を取って控えに回ってたお兄ちゃんが試合に出た時には、もう……他の選手たちが立ち上がれないような状況で……」
春奈の言葉ですぐにその試合がどんな状況だったのかが思い浮かぶ。きっと一番初めの、帝国学園と雷門の練習試合と同じくらいの悲惨さだったのだろう。40年間無敗だった帝国学園、その彼らが……自分たちがその実力を身を以て知っている帝国学園が負けたなんて想像がつかない。
「それは本当なのか……?音無」
「ええ……」
風丸がもう問い返す。春奈は悲しそうに頷く、彼女の表情から帝国の敗北は認めざるを得ない。
その時、微かに何かオルゴールのような音が部室に流れ始める。花織は気になって音源を探し始めると、それは彼女のカバンの中からだった。携帯電話、花織は流れで思わず中身を改めてしまう。その着信はメールの受信を知らせるものだった。
「……っ」
中身を呼んだ花織が息をのむ。それを見た風丸と春奈が花織の元へと歩み寄った。
「どうしたんですか?花織先輩」
春奈が問いかけながらひょいと花織の携帯を覗き込む。送られてきたショートメールの内容、そしてその送り主の番号を見て、あっと彼女は声を上げた。
「これ、お兄ちゃんの番号……」
「……!」
風丸がふっと眉をしかめる。そして花織に失礼だとは思いつつも、花織の携帯の中を彼もまた、覗き込んだ。