第16章 最後の悪あがき
翌日、今日は皆、問題となっているイナビカリ修練所で練習していた。やはり格段に個々の能力自体は上がるのだから、使わない手はない。これ以上、能力値を上げ過ぎるのもどうかと思うが。
「お疲れ様、一郎太くん。……みんな修練所の特訓になれてきたよね。私もやりたいなあ」
「駄目だ。花織にあんな無茶はさせられない」
羨ましそうにつぶやきながら風丸にドリンクとタオルを差し出した風丸が、きっぱりと花織の言葉に首を振る。彼は自分の休憩時間、わざわざ事務処理をしていた花織に会いに来たのである。普段事務処理の仕事は春奈の管轄だが、今日彼女は帝国学園の一回戦を情報収集をかねて観戦に行っているため、彼女は留守だった。
「でも……、私」
「駄目だ、いくら花織の頼みでもこれだけは譲らないからな」
花織が不服そうに風丸を見ても風丸の答えは揺らぎすらしなかった。
今もまだ、花織と初めて修練所で特訓をしたときのこと覚えている。何度も転び、何度も腕や身体をどこかに打ち付けた。高いところから落ちかけた時もある。練習が終了した時の彼女の身体はぼろぼろで、もう二度とあそこでは練習させたくない、と感じた気持ちはあせない。風丸は思う。
――――少なくとも、自分が花織の傍にいるかぎりは無茶なことはさせられない。
「そんなあ…………」
花織が唇を尖らせて不満そうに声を漏らした時だった。
「大変ですっ!!」
春奈が物凄い勢いで、部室に駆け込んでくる。花織は思わず春奈の剣幕に驚いて立ち上がってしまった。落ち着いてからちらと部室の時計を見る。そういえば、もう帝国学園VS世宇子中学の試合は何分も前に終わっているはずだ。少々落ち着いたらしい春奈は肩で息をしながら、少し暗い面持ちで言葉を切りだす。