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恋風

第16章 最後の悪あがき




「個人的な技術が格段に上がったせいだ」

またもや、一言で少しわかりにくい言葉を響木が告げる。それでもスポーツ経験者である花織には少しだけ意味を悟ることができた。それが、自分の経験してきた個人技では全くあり得ないものなのだということが。

「分かり易く説明してください」
「身体能力が向上してもそれを感覚としてとらえていない。しかも、相手の身体能力がどのくらい上がったかが感覚的にわからないから、タイミングが合わせられない」

夏未の催促に響木が答える。彼の答えを聞いて花織は完全に納得がいった。なるほど、チームスポーツならではの問題だ。花織も風丸とよく練習をしているのだから彼から受けるボールが日々強くなりつつあることは何となく感じている。だがそれは花織が風丸とずっと対で練習をしていたからこそわかることだ。

修練所での練習が続いていたこの頃、少し間が空いてしまったから感覚的にわからなくなってしまうかもしれない。特に自らの実力が向上しているのだったら。

「そんな……それじゃみんなバラバラじゃないですか」
「能力の向上が裏目に出るなんて……」
「これから千羽山中と戦わなければならないのに」

マネージャー陣が不安げな声を上げる。花織も何も言わなかったが、同じように不安を感じていた。チームスポーツで息が合っていない、というのは問題だ。サッカーを自らがするようになってからはプロの試合も見るようになったが、タイミングがバラバラで負けてしまった試合も何試合も見た。こういうところがチームスポーツの難しさだといえる。

―――――試合までもう日にちがないというのに。大丈夫なのだろうか。

「お前たちはいつも通りに振る舞え、わかったな」

響木の言葉にマネージャーたちは頷く。こういう時こそ、自分たちが彼らを支えなければと。花織も同じ思いを胸に抱いていた。
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