第15章 歪みきった関係
「はい、ボールを追う姿から伝わりました。風丸さんが走る場所は今はこのフィールドなんだって」
ボールを通して皆に気持ちが伝わる。風丸が今日この試合で学んだことだ。宮坂にもボールを蹴る自分を見て、自分の気持ちが伝わっていたのだろうか。そう思ってみれば、そうなのかもしれない。
――今日は普段よりも花織の声がよく聞こえた気がする。いつもよりも俺のサッカーへの想いが強かったからか。
風丸は切なく微笑むと、立ち上がった。肩にかけた白いタオルが少しずれる。そして宮坂に背を向け、自分の想いを口にした。
「陸上のトラックを走るのは楽しい。でもサッカーには自分一人では見られない世界がある。俺はイレブンの、イレブンは俺の感じるものを感じる。今はそれを追いかけてみたいと思うんだ」
ちらり、と風丸が宮坂を振り返る。宮坂は力強く胸の前でこぶしを握った。
「はい、フィールドを駆ける風丸さんはカッコいいです、僕応援してますから!」
「ありがとう」
風丸が宮坂に礼を言えば、宮坂も風丸に背を向ける。一歩だけ踏み出して何か風丸に言うことを思いだしたのか、風丸を振り返り宮坂が言葉を紡ぐ。
「今日の風丸さん……きっと月島さんも、惚れ直したと思います。本当に、物凄くかっこよかったですから」
「いいや、……そんなことはないさ」
宮坂の言葉に風丸は目を伏せる。そして静かに首を振った。
風丸は、陸上よりもサッカーを選ぶという決断を下した。それともう一つ、彼の中でのもう一つの悩みの決断を彼は試合の中で決めていた。
もう期待しても仕方がない……。俺の我儘よりも花織の気持ちを尊重してやりたいから。
先日の言動、花織の鬼道に対する仕草や何もかも……、今までのすべてを思い出して考えた結論だ。花織の傍にいるべきなのは俺じゃない。
もう決めたんだ。花織と別れる、次の試合が終わったその時に。次の試合が、花織に花織の恋人として応援してもらえるラストゲームだ。