第2章 不思議な気持ち
風丸が小さな声で礼を呟けば花織は安堵したように表情を緩める。そして手の中の缶をぎゅっと握りしめた。
「こちらこそ、聞いてくれてありがとう。……これからもよろしくね」
そういって花織は風丸の方へ手を差し出す。風丸は花織の顔を見て微笑み、花織の手を優しく握った。
「ああ!」
風丸の返事に花織は目を細めて笑う、そしてすっと立ち上がって大きく伸びをした。花織は静かに空を見上げる。紺碧の空が薄い雲に覆われていて、辺りは仄暗くすでに街灯も点灯していた。
「そろそろ帰らないと」
そして自分の髪に手を伸ばすと一気にゴムを引いた。結い上げられていた髪が艶やかに花織の背中に流れる。その髪は風にふわふわと靡いた。
「月島って、部活の時だけ髪を結ぶよな?」
「うん、どうしても走る時は邪魔だから。……似合わないかな?」
くす、と笑いながら、まるで風丸を茶化す様にさらりと髪を靡かせてみせる。彼女個人にとって髪型は似合う似合わないは関係ないと思ってた。とにかく髪を結ぶのは走る際に邪魔にならないためだ。
「いや、その……似合ってる、ぞ」
「え……?」
花織が風丸を振り返る。風丸は頬を赤く染めながらも視線はそらさずに花織を見つめていた。花織はにっこりと微笑んでヘアゴムを手に通した。
「ホント?そう言ってもらえると嬉しいな。風丸くんともお揃いだもの」
もちろん半分は社交辞令だろうが、似合っていると言われて嬉しくないことは無い。お揃いだと花織に言われて、ほんのり顔を赤らめて笑う彼女をみて、風丸の鼓動はどんどん早くなる
「……風丸くん、帰ろう?」
「っ……ああ」
俺はどうかしてしまったのだろうか、そんな疑問が風丸の中で渦巻いて大きくなっていった。