第15章 歪みきった関係
花織は初めは乗り気ではなかったにも関わらずいつの間にか、誰より熱く、胸の前で強くこぶしを握りしめていた。
――――――頑張って……っ!!
彼の速さは誰にも負けないものだと花織は確信していた。彼こそが、花織の目指す速さだったのだから。だから霧隠に妨害されようともなんだろうと勝つのは風丸だと花織は信じていた。今、彼女の瞳は風丸だけを見据え、風丸の駆ける音だけを聞いている。
花織は気が付いてなかった。自分自身の気持ちに自分が知らないところで決着が付き始めていることに。本当にただ一人だけに気持ちが向こうとしていることに。
***
勝負は結局、戦国伊賀島の初鳥、風魔によって中断され、結果が明らかとなることは無かった。
そして迎えた雷門中学対戦国伊賀島の試合は、戦国伊賀島の忍術――、というか必殺技に翻弄され、攻めきれないでいた。そんな中、先ほど風丸に勝負を仕掛けた霧隠が必殺シュート"土だるま"を放ち、先取点を伊賀島のものとした。
ハーフタイム、戻ってきた風丸に花織は心配そうに声を掛ける。
「一郎太くん、さっきの……大丈夫だった?」
花織の言うさっきの、とは風丸がオーバーラップした際に、相手ディフェンス高坂の"かげぬい"に派手に転ばされてしまったからだった。花織その時から風丸が心配でならなかったのだ。
「いや、俺は大丈夫なんだが……」
ちら、と珍しく風丸が花織から視線を逸らし、円堂に視線を向ける。先ほどから彼は円堂のしぐさが気にかかっていた。霧隠のシュートを受けてからどうにも彼のふとした行動が気にかかる。右手を庇っているように感じられるのだ。
「だったらいいんだけど……。はい、ドリンクとタオル」
「ああ、ありがとう」
風丸が笑って花織の手から二つを受け取る。花織は心配がぬぐえないながらに新しいタオルとドリンクを手に持ち、彼の近くにいた土門にタオルとドリンクを渡した。
「はい、土門くん」
「おう、ありがとう。花織ちゃん」