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恋風

第15章 歪みきった関係



***

事件は、試合前の練習時に起こった。花織はその時をマネージャーの仕事をしながら目の当たりにした。ドリンクやタオルを準備する最中、花織はフィールド内が不穏な空気に包まれていることを感じ取ったのだ。どうやら対戦チーム戦国伊賀島の選手が豪炎寺に勝負を持ちかけたのらしい。

だがその勝負は、どうしてか風丸が受けることになっていた。

「行けえ!!風丸!!」
「ぶっちぎるッス!」
「風丸くん、頑張って!」

彼への声援を聞きながら、花織は風丸の元へと駆け寄る。彼女の表情は困惑を露わにしていた。花織は試合前にどうしてこんな勝負をすることになったのか風丸に問いたかった。試合前に相手にステータスを露わにすることはあまり良い行為だとは言えなかったからだ。

「一郎太くん……」
「どうした花織?」

不思議そうな顔をして風丸が花織に問いかける。するとそれが気にかかったのか、霧隠が怪訝そうな表情を浮かべる。

「なんだよお前、そいつの女か?」
「え……っ」

唐突な質問に花織は驚く。刹那、風丸が花織の肩を抱いてああ、と堂々とした返事を返しながら霧隠を見た。

「そうだ、俺の女だよ」

今はまだ、という思いを風丸は押し殺す。花織は普段風丸の言わない大胆な言葉に目を大きく見開いて風丸を見上げた。彼を見上げた花織の頬は真っ赤に染まっている。その様子に一部のチームメイトは赤面し、大多数はやれやれと呆れたような様子で二人を見ていた。

「……っ」
「へえ~。そりゃ、かっこ悪いところ見せられないな」
「ああ、もちろんだ。……花織」

風丸は花織を秋の隣まで連れて行くとふっと微笑む。なんだかいつもの風丸ではないかのように花織は思えてしまった。

「ここで待っててくれ。絶対勝つ」
「あ……、うん……。頑張って、応援してるから」
「ああ」

勝負の理由を聞きに行ったはずなのに、花織は結局風丸に応援の言葉を送っていた。呆然としたままの花織を置いて風丸は霧隠の元へと戻る。そして春奈のホイッスルと同時に、彼らは走り出した。

まるで風を切るような速さで二人はフィールドを駆ける。拮抗した実力、まさに鎬を削るような勝負だ。どちらも一歩も譲らない。
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