第15章 歪みきった関係
春奈のその言葉に花織は俯いてしまった。声色、台詞すべてがその言葉を花織に突きつける。花織はスカートの裾をぎゅうっと握り締めた。鬼道にも言われた言葉だ。"お前は本当にアイツが好きなのか"――――事情を知る人間から見ればきっと花織の風丸への想いは同情に見えるのだ。いや、同情なのかもしれない。
何故なら花織もいまだに何も決めきれずにいるのだから。
***
翌日、全国大会一回戦の開始時刻が迫っていた。夏未からの応援メッセージを受けとった雷門イレブンは練習の為に控え室から会場への移動を開始し始めていた。花織は険しい顔をしている風丸の傍へと歩み寄る。選手たちが移動を始める中、花織は風丸の名を呼んだ。
「一郎太くん……」
「花織」
花織に気が付いた風丸は先日とは違う、晴れやかな様子で花織に笑い掛けた。花織はきょとんとしてしまう。きっと彼は今も思い悩んでいるだろうと思っていたのだ。花織が風丸を見つめていると、椅子に掛けていた風丸が立ち上がって花織の肩に手を置いた。
「大丈夫だ、もう迷わない」
「……一郎太くん」
「花織」
風丸が笑う。花織は胸にあてたこぶしをぎゅっと握りしめると、思わず泣きそうなほどの笑顔が零れ落ちた。
「花織。俺、サッカーが好きだ」
「……うん」
「宮坂には今日のプレイで答えを見せるつもりだ。……今日、見に来てるんだアイツ」
「うん……っ」
花織は胸に飛び込んでぎゅっと彼を抱きしめる。どうしてだかはわからない、だがとても胸が切ないのだ。サッカーを彼が選択してくれたことが嬉しかった。だが同時に彼が下した決断がとてもさみしいものであるかのように感じられたのだ。風丸が花織の背に手を回す。
「花織……」
「わかった、わかったよ……。一郎太くんが決めた答えを、私は全力で応援する」
「ありがとう……」
自分の肩に顔を埋めている花織を彼は優しく撫でた。彼の中でもう一つの決断はいまだ決めかねていた。もう決めなければいけない。花織をここから解放するために。