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恋風

第15章 歪みきった関係



嘘、ではない。花織は微かに頷く。すると春奈は生真面目な顔をして花織に詰め寄った。

「私、花織先輩にお願いがあるんです」

真っ直ぐな春奈の視線に見つめられて花織は戸惑う。何、と苦笑いしながら問い返せば春奈は言葉を紡いだ。

「お兄ちゃんとのお付き合い、考えてくれませんか?」

先日とは全く違う、掌を返したような頼みに花織は驚く。先日春奈は風丸に誠実であるようにと花織を叱ったのだが。花織がきょとんとしていたことに気が付いたのか、春奈は自分の席に座りなおすと少し俯いて理由を話し始める。

「お兄ちゃん……、私を引き取るためにいろんなこと我慢してたんです。……花織先輩に酷いことを言ったのも、きっと無理に花織先輩を諦めようとしたからだと思うんです。……私の為に」

春奈はどうやら自分のせいで鬼道が花織と付き合えなかったと思っているらしい。悲しげな顔をして彼女は俯いている。花織も思わず胸が切なくなるのを感じた。

春奈の言い分は間違いないと思う。鬼道は今まで自分を犠牲にしてきたのだろうと感じている。本当は優しい人だから花織も鬼道を嫌いになり切れなかったのだろうから。

「だから……!お兄ちゃんは悪くないんです!本当は花織先輩のことが大好きなんですっ!風丸先輩と同じくらいに」

ずきりと花織の心臓が大きく音を立てる。

「この間と、私が全く違うこと言ってるってことはわかります。………でも、お兄ちゃんがこのまま報われないなんて……。だから、花織先輩が本当にお兄ちゃんのことを好きだって言ってくれるなら、少し考えてもらえませんか?お兄ちゃんの彼女になること……」

どうすればいいのだろうか。ある人からは時間をかけて悩めと、ある人からは早くはっきりしろと。鬼道を取れと、風丸を取れと、何度もどちらに揺さぶられて。本当に何を取るのが正解なのだろうか。花織は迷いを隠して春奈に作り笑いを浮かべて見せる。

「うん……。でも、私、一郎太くんのことが好きだから……」
「あ、風丸先輩と別れろっていうわけじゃないんですけど……っ、その、先輩が本当に風丸先輩のことが好きなら」

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