第15章 歪みきった関係
「ありがとう……。俺の為にいろいろ考えてくれて」
「ううん。……大好きな人のためだもの、当たり前のことだよ」
「……花織」
大好きな人という言葉にまた胸が苦しくなる。風丸が切なく顔をゆがめれば花織は静かに瞼を閉じた。彼は顔を寄せ、深く花織に口づける。何度も何度も角度を変えてキスを繰り返しながら風丸は思わずにはいられなかった。
―――――何もかも、すべてが思うように進めばいいのに。
風丸が唇を離すと花織はっと息を吐き出す。頬を赤らめている花織は無性に愛おしく、絶対に手放したくないと思えた。
「好きだ……花織」
もう一度、風丸が花織の唇に唇を重ねる。ころりと、花織の膝の上に置かれていたサッカーボールが転がり落ち、風丸が先ほど転がしたボールにあたって跳ね返った。
***
翌朝、花織は一人で登校していた。朝は基本的には風丸と一緒ではない。家が全く逆方向の風丸には相当の負担がかかることになってしまうためだ。無論、先日まではあんなことがあったばかりだからと風丸が譲らなかったのだが……。きっと彼も今日はさすがに一緒に登校したいとは思わないだろう。昨日の別れ際には"少し自分で考えてみるよ"といっていたのだから。
「おはようございます」
朝の挨拶を口にしながら花織が部室の戸を開ける。刹那、花織が気にしている彼の話題が花織の耳に飛び込んできた。
「まっさかあ、風丸がサッカーやめるわけねえだろ」
「そうっすよ、大体風丸先輩が抜けたら炎の風見鶏できなくなるッス」
「でも本当に陸上部で走ってたでヤンスよ。こっちの練習遅れて陸上やってるって変でヤンスよ」
そんなことを話していた面々が花織の挨拶を聞いて花織に視線を向ける。そこには秋と染岡、壁山、栗松、少林の姿があった。花織は目を丸くして皆を見る。どうして彼が悩んでいることを知っているのだろうか。