第15章 歪みきった関係
「そうなのか……?」
「そう。でも私は走ることが好き、ボールを蹴ることも好き。だから今まで通り練習は続けていくつもりだよ。……私、これからも一郎太くんと一緒に走りたい。一郎太くんがどんな選択をしたって」
花織はそういって肩下になり始めた髪をさらっと揺らすと、ボールの上に乗せられている風丸の手に自分の手を乗せた。
「一郎太くんの選択は、私なんかと違って難しいものだけど」
陸上部ではエースを、サッカー部ではDFの要、そしてキャプテン円堂を支える役を担う彼だ。先輩と揉めに揉め、戻る場所のない花織とは違う。誰もが彼の帰還を、そして滞在を願っていた。
自分を大切にしてくれる、自分にとっても大切な仲間たちを選ぶと言うことは、どちらを選んでもどちらも裏切ってしまうような……そんな気持ちにさせられる。
彼は気が付いていなかった。
自分が選びきれない理由こそ、自分と鬼道を花織が選びきれない理由なのだと言うことに。
「私は、一郎太くんが本当に今したいことを選ぶのが一番だと思う。わからないなら時間を掛けて悩んで……。思い悩むなら私が相談に乗るし、何を選んでも私は一郎太くんの傍にいるから」
言い切ってしまってから花織はハッとする。自分が今彼に告げた言葉は、先日土門が自分にくれた言葉と同じなのだと。早くはっきりしなければならないのは彼よりも自分なのだと。
「花織」
傍にいるから……彼女の放ったその言葉に風丸の心は締め付けられるほど苦しくなった。この問題にも答えを出さねばならない。そんなことを思いながらも風丸は堪えられなかった。風丸が左手をベンチに付き、花織の頬に右手を添える。ころりと彼の膝からサッカーボールが転がり落ちた。