第15章 歪みきった関係
動揺しているのだ、風丸は。自分が陸上部だったことを忘れるくらいにサッカーに打ち込んでいたのに、今この全国大会を目前にしたタイミングで戻ってこないかと問われたことに対して。
「……一郎太くん」
「……。どうした、花織?」
また深く考え込んでいたらしい風丸はワンテンポ遅れて花織を振り返る。花織はしっかりと風丸の瞳を見つめて小さな声で言葉を紡いだ。
「後で……、今日の自主練の時にでもちょっと話そう……?」
***
練習を終えて、ふたりはいつも通り、河川敷のサッカーグラウンドへ練習のためにきていた。ここでの二人きりの練習もすっかりと習慣となっている。共に出会うまでも、出会ってからも部活ばかりに打ち込んできた二人にとってこうやって二人きりで練習することこそがデートのようなものだった。
しかしいつもなら双方が疲れ果てるまでボールを蹴るはずなのだが、今日は違った。二人ともサッカーボールを膝に抱えたまま、隣り合わせにベンチに座っている。
「……一郎太くん」
花織がゆっくりと視線を送りながら彼の名を呼んだ。彼はどことなく寂しげな表情を浮かべながら花織に明らかな作り笑いで返す。
「どうした?」
花織は胸がぎゅうと苦しくなる。どうかしているのは風丸の方だ。今日、陸上部に行ってからずっとこんな顔ばかりしている。理由は間違いなく宮坂の言葉だ。
「……ずっと気にしてるんだね。宮坂くんに言われたこと」
「…………」
花織が根源を指摘すれば、風丸は花織から視線を逸らして俯く。あの後の練習での風丸は悲惨だった。炎の風見鶏が一発も決まらなくなってしまったのだ。中断する前までは百発百中だったというのに。風丸は力なく笑う。さらりと彼のポニーテールが揺れた。