第15章 歪みきった関係
花織はそう言ってスタートラインに立ち、スタートの構えを取った。心臓の鼓動が走る前だというのに早くなり始めている。緊張を堪えて花織は隣に立つ風丸を見た。男らしいその横顔は、初めて走った時と違わない。いや、以前よりもカッコよくとても心を揺さぶられた。
頑張らないと。
思いを胸に花織は前を向く。
「よーい!」
開川の声が響き、一瞬の間をおいてピストルの音が鳴り響いた。花織は強く地面を蹴る。低い姿勢を保ったままぐんぐんと加速していく。大丈夫、まだ走れる。花織がそう思いながら姿勢をだんだん高くし、加速していた時だった。特有の痛みが彼女の胸を襲った。しかし花織は構わずにゴールへと駆ける。ゴールを走り抜けたとき、結果を見ずとも結果が向上していないことが分かった。
風丸との差は開き、宮坂との差は縮まっていたからだった。荒い息を整えながら花織は髪を掻き上げる。練習をしていない花織が悪いとはいえ無性に悔しくなった。
「さすが、風丸さんに月島さんです……!はやい……!」
宮坂が膝に手を付き、息を荒げて風丸を見上げる。
「お前たちもだらしないぞ。ここしばらくサッカーに行ってた風丸やマネージャー業に徹してる月島に、現役で走ってるお前たちが負けてどうするよ」
「そうはいいますけどね、風丸。前より早くなってるッすよ」
岩手の言うとおり風丸のスピードは花織とは違い向上していた。なにしろ、通常練習に加えてあのイナビカリ修練所、そして花織との自主練をこなす風丸だ。以前から全国レベルだったスピードがさらに速くなっていたっておかしくはない。自分の結果は残念だったが、風丸のそんな姿を見られるだけで花織の心は軽くなる。
風丸の恋人として風丸が誇らしくて仕方がないのだ。