第15章 歪みきった関係
風丸と花織は宮坂と共に陸上部のグラウンドへとやってきた。花織はグラウンドに踏み込もうとした瞬間に、ほんの少しの恐怖感に駆られる。女子陸上部の先輩方は今ここで練習しているだろうか……。謹慎期間は長かったがそろそろ復帰しているはずだ。もしも彼女たちと顔を合わせた時の気まずさはどれほどの物かは分からない。
「花織……?」
立ち止まった花織に風丸が声を掛ける。そしてはっとしたように先におり始めていた階段を再び上ると、花織に左手を差しだし、花織の手をそっと取った。
「大丈夫だ。行こうぜ」
「うん……」
とんとん、と彼に手を引かれて階段を降りる。下では宮坂が風丸を連れてきた旨を男子陸上部員たちに話していた。トラックには女子陸上部の姿はなかった。
「久しぶりです、先輩」
「お久しぶりです」
花織と風丸が軽く挨拶をすれば陸上部の面々はふたりを迎え入れてくれた。しかしふたりを見ると少し呆れたような表情で彼らはため息をつく。
「おいおい風丸、月島と仲がよさそうで何よりだが、それは彼女がいない奴らに対する嫌味か?」
「あーあ、彼女持ちはいいよなあ」
陸上部2年生、風丸と同学年の総細と岩手がふたりに茶化すような言葉を掛けた。ふたりに掛けられた冷やかしの言葉に花織と風丸はきょとんとする。そしてよくよく考えてみればふたりはいまだ手をつないだままであったことを思いだした。どちらともなく手を離して、気まずそうな照れ笑いを彼らに向けて見せる。そこに陸上部3年の風丸の先輩である開川路也が声を掛けた。
「まあ、月島が風丸について行った時点で見せつけてるようなものだから、いまさらだな。……風丸、月島」
開川がふたりに笑い掛ける。
「凄いじゃないかサッカー部、全国に出るんだってな」
「はい、先輩」
開川の問いに風丸が頷く。
「やっぱ風丸が助っ人したたおかげだろ、月島?」
「うん、そうかも。一郎太くんはDFの要だから」
「おいおい花織、冗談はよせ。岩手も分かってるだろ……俺のほかにも助っ人はいっぱいいるんだから」
謙遜する言葉に花織は肩をすくめる。花織にしてみれば決して冗談で言ったわけではなかったからだ。