第15章 歪みきった関係
「よかったら、交際を考えてくれと言われたけれど……。私はいったい、どういう返事をするのがいいかが全く分からない」
花織は膝に掛けているサッカーボールをぎゅうと抱きしめる。
「鬼道さんが好きなのは確か。でも一郎太くんのことが私の中で何より大切なつもり。だから私は一郎太くんには断るって宣言してる、本当にそれでいいのかは分からない。……私は、私を守ってくれた鬼道さんにも一郎太くんにも負い目があるから……」
どこまでも、底抜けに答えのない問題だった。土門は唸りながら空を見上げる。青い空は高く澄んでいて花織の悩みとは遠くかけ離れた模様であった。
「……難しい問題だよな」
花織の心が土門にも、女心としては分からないが人間的な気持ちとしては分からないでもない。仮に花織が完全に風丸に心が向いていたとしても断り切るのは困難だろう。鬼道と花織には帝国時代の上下関係がいまだ根付いたままでいる。彼女の鬼道に対する敬称と敬語がそれを物語っている。
ゆえに、彼女が今の状態で鬼道のことをバッサリと切り捨てることはできないだろう。
「花織ちゃん。あくまで、俺の考えなんだけど……」
口籠りながら土門が言う。土門は心情的には鬼道を応援する立場にあった。何といっても彼は鬼道との付き合いの方がどんな形にあったとしても風丸よりも1年長い。その分鬼道がどんな想いで花織をみているかは何となく知っているつもりだ。だからこそ、そろそろ二人が結ばれてもいいのではないかと思う。
だがそれと同時に風丸が花織をどれだけ大切に思っているかも土門は知っていた。鬼道に調査報告をしていたとき、花織のデータ収集は専ら風丸と秋から入手していたのだから。だからこそ、この二人を別れさせるのはあまりに風丸に酷だと思う。できることなら別れないでほしいと土門は感じていた。
つまりは、答えなどないのだ。第三者の視点では。それを決めるのことができるのは花織だけだ。