第15章 歪みきった関係
「頼みごとばかりで土門くんには申し訳ないんだけど、少し相談に乗ってくれないかな。少なくとも帝国にいたころの私を知ってくれている土門くんに聞いてみたいことがある」
「ああ……」
土門は不思議そうに花織を見る。花織は目を伏せてゆっくりと、だがはっきりとした口調で話を切り出した。さらさらと心地の良い風が花織の髪を揺らす。
「土門くんに以前、私は一郎太くんが好きだから、鬼道さんのことは関係ないって言ったことがあったよね」
「ああ」
「あれ、少し違うの。……私、ずっと鬼道さんのことが好きだった。一郎太くんの傍にいて忘れようとしてたけど、ずっとできなかった。一郎太くんももちろんそれは知ってる。……現に何回も別れ話を切り出したことはあるから」
「えっ!?」
思わず吃驚が口をついて出た。確かに土門は花織が鬼道に想いを寄せていることには勘付いていた。しかし、まさか花織が風丸に別れを切り出していたとは考えもしなかった。他から見ればそんな素振りは2人に全くない。いつだって寄り添い、仲睦まじげに過ごしている、他から見れば妬みの対象になるような2人なのに。
「今は別れたいなんていえないくらい、彼が好き。……でも鬼道さんが好きな事には変わりない、鬼道さんが好きだからと言って一郎太くんを好いていないわけじゃない。だから私、このまま鬼道さんに振られたんだという事実だけを持って一郎太君の傍にいれば、一郎太くんの言うとおりいつか鬼道さんを忘れていけると思ってた。……酷い言葉を掛けられたんだから、尚更ね。……でも」
花織はふ、と息を吐く。土門にも花織の言葉の先は予測できた。それ以外の事象は考えられないのだ。
「帝国との決勝戦の前に、言われたの。総帥と決別した今なら言える、って……。お前が好きだって……」
総帥と決別した後なら言える。それは鬼道が今まで影山によって恋心を抑圧されていたということを示唆する台詞だ。花織は鬼道の口からきいたときにそれを悟ったし、土門も花織の今の言葉で瞬時に察知した。花織の場合、彼が影山に遵守していなければ自分の存在が消されていたかもしれないという可能性も。