第15章 歪みきった関係
ポンッとサッカーボールが弾む。
とうとう自分用に買ってしまったサッカーボールを花織は宙へと蹴り上げた。このボールは買って間もない筈なのにすでにぼろぼろになってしまっている。そんなボールをまた地につく前に宙へと蹴り上げ、太ももの上で弾ませた……所詮、リフティングというやつだ。
彼――、風丸がサッカー部に入ってからボールに触れることが多くなった。もちろん、臨時マネージャーとしてサッカー部に入ったことももちろんだが、彼の練習相手であり続けるために自主的に練習することもあったし、彼の練習に付き合うこともあった。そのせいか、実際プレーでは使うことのないリフティングも上達し、それに伴ってボールコントロール能力も上がった。
ボールを蹴りながら花織は胸を押さえる。陸上部にいたときよりも運動量が減ったせいか、少しだけ体重が増えてしまった。どうにか風丸に隠れてイナビカリ修練所で特訓をする方法を探さねばならないかもしれない。そんなことを思いながら花織がボールを蹴っていた時だった。
「花織ちゃんパースっ!!」
突然に名を呼ばれて花織は振り返る。振り向きざまにボールを声の主にボレーキックで送った。声の主は花織の蹴ったボールを軽々と胸でトラップし、ボールを地に踏みとどめた。
「ナイスパス、花織ちゃん」
「土門くん」
花織が土門の元へさっと駆け寄ると私服姿の彼はにこっと笑う。
「よっ!腹ごなしに運動?」
土門はパスを返しながら花織に問う。土門がこう問いかけたのはわけがあった。今日は雷々軒で地区予選優勝の祝賀会を行ったのだ。まだあれから2時間程度しかたっていないのに、花織がこうやって河川敷で練習していたため、土門は気にかかって彼女に声を掛けてみたのだった。
「風丸は一緒じゃないの?」
「うん…………、声掛けてないから」
花織はパスを受け取るとひょいっとボールを拾い上げる。
「よかったら土門くん、練習の相手してくれない?ひとりに飽きてきたところなの」
「ああ、別にいいけど……」
「ありがとう」
にこりと花織は微笑むとボールを再び地面につけた。
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