第14章 真実と疑惑
春奈の言葉に鬼道がハッとする。……花織が言ったのだろうか、いや他の誰かということもある。しかし今はそんなことはどうでもいい、話が春奈にしれてしまったことが問題だ。知られるわけにはいかなかったのに。いや、もう知られたところであとの祭りか。
「ああ」
「……っ」
低い声で鬼道が答えれば、春奈の身体がびくりと震える。花織の言っていたことは真実だった。本当に彼女の兄は自分を引き取るために1人で苦しんできたのだ。
「連絡くれなかったの私のためだったんだね」
「お前と暮らすためならどんなことでも我慢できた。……いや、違うな我慢できなかったこともあったか」
鬼道は一人の女を胸の中に思い浮かべる。彼女―――花織のことだけはどうしても我慢できなかった。もしかするとそのせいで自分は負けてしまったのかもしれない。総帥が何度も忠告してきた言葉が真実だとは思いたくもないが、自分の心に堪えられない想いがあったからこそ、こういう結末になったのかもしれないと鬼道は自分を嗤う。
「だがいまさら何を言っても仕方ないな。……すまない」
「ううん、私音無のお父さんとお母さんと暮らせて幸せよ」
思いがけない春奈の言葉に、鬼道はえっと思わず声を漏らしてしまう。