第14章 真実と疑惑
鬼道を視界に入れてしまうとさきほどの出来事がありありと目の中に浮かんできてしまう。――俺との交際を考えてはくれないか。花織は小さく首を振る。ダメだダメだ、今はそんなことを考えている場合ではない。
「円堂おおおおっ―――!!!」
鬼道の声だ。花織がぱっとフィールドへと視線を戻す。するとちょうど鬼道が円堂の守るゴールにシュートを打とうとしているところだった。しかし鬼道の足がボールに触れた瞬間、豪炎寺がスライディングで鬼道の持つボールへと滑り込む。
「あ……っ」
豪炎寺の勢いに押されて鬼道がよろめいた。その表情が苦痛にゆがんだのが見て取れる。どくんと、花織の中で何かが揺れたのが分かった。それは以前、風丸が円堂を庇って倒れた時と同じ感情だった。
――――――っ。
無意識に花織の足が一歩前へ踏み出した。しかしそれはちらりとこちらを見た彼、鬼道と同じフィールドに立っている風丸の姿によって踏みとどめられた。――私は行けない。
花織がとどまったと同時にふらりと隣に立つ春奈が鬼道の方へと動いた。花織は目を伏せて自分に言い聞かせる。ここは春奈ちゃんに任せていい、自分が出しゃばるべきところではない。けが人の手当てだとはいえ、きっと一郎太くんは私の行動を良くは思わないだろう。私なら嫌だから、大好きな人が他の異性のことを心配するところを見るのは。特に全国大会の進出が掛かったこんな大切な試合で。
これでいい、鬼道の想いは受けないでただ彼だけに費やせば。鬼道の申し出も断ろう。自分に大切なのは風丸だけだ。そうでなければいけない。
鬼道はそのすぐ後に春奈の応急手当てを受けて試合に戻った。幸いプレーには問題がなかったようで、彼のプレーには先ほどと劣りは無かった。
そして激しい攻防の末、円堂が守りぬいたボールを半田、少林の竜巻旋風、そして今までひた隠しにしてきた、攻めの起点とするためにと花織と風丸のふたりで考案した疾風ダッシュにより豪炎寺へと繋げた。そして壁山、豪炎寺、そしていつの間にかゴール前に上がっていた円堂によって帝国ゴールに決勝点となったイナズマ1号落しが叩き込まれ、40年間無敗だった帝国学園の歴史に終止符を打った。