第14章 真実と疑惑
「花織……、総帥と決別した今なら言える。……花織、俺は」
鬼道が一度言葉を切る。そしてずっと彼が胸に秘めていた、口にしてはいけないと抑え込まれていた感情が伝えるべき相手に向かって紡がれる。
「俺はお前が好きだ」
どきり、と花織の胸が大きく音を立てる。あまりの静寂に唾を飲むことすらはばかられる。真摯に向けられた彼のゴーグル越しの瞳から目を逸らしてはいけないと無意識の中で思った。胸が、締め付けられるような痛みに蝕まれる。掠れた声で彼の名を呼んだ。
「きどう、さん……」
「お前が風丸と恋人同士だということはもちろん知っている。だがそれでも俺はお前が好きだ」
鬼道の言葉には一切曇りはない。ただひたすらに今まで言いたかった言葉を彼は真っ直ぐに花織へと向ける。花織は思わず泣きそうな気持になってしまう。そんなことを言われても……。いまさら過ぎる、今彼女の中には鬼道だけに向けられているわけではない恋心があるというのに。
「いまさら……、そんなこと」
「今すぐにとは言わない。花織、俺との交際を考えてほしい」
花織は足元に視線を落とす。そしてふるふると力なく首を振った。鬼道の想いは受けられない、いくら彼を好きだとしても今自分には風丸一郎太という大切な彼がいる。その彼を鬼道のために捨てることなどできない。いつも自分を気にかけ、心地よい居場所を花織に与えてくれていた彼を。
「お前は本当にアイツが好きなのか?」
鬼道の言葉は鋭いものだった。花織はハッと顔を上げる。本当に、好きなのか……その言葉は鬼道が思う以上に花織の心に刺さった。本当に好きだ、好きなはずだ。