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恋風

第14章 真実と疑惑




***

風丸と春奈が話をしているほぼ同刻、2人は以前花織がサッカー部の練習を覗き見るために使っていた場所に来ていた。ここからはフィールドがはっきり見渡せるのにフィールドからは全くの死角となっている。そんな場所だ。そして2人にとっても思い入れのある場でもある。

「試合前にお前とどうしても話したいことがあった」

あの頃座っていた場所に花織を座っていた。鬼道もあの頃のように花織の傍に立ち、しかし背を向けていた。鬼道の赤いマントがひらりひらりと揺れている。花織はそのマントの裾をじっと見ていた。どうしてか彼を見てはいけないような気がした。

「お前は、あの日俺が言ったことを気にしているか……?お前が転校する前日の」
「……気にしないわけがありません」

鬼道の気を使うような声に花織はきっぱりと言う。あの言葉を今まで辛く思わなかった日は無い。あの言葉に縛られなかった日はない。今でもはっきり思い出せる、あの日の鬼道の表情、声色、何もかもすべて。それはずっと花織の心を蝕み続けてきた。

「忘れてくれ」
「え……?」

花織が思わず顔を上げる。鬼道はじっとゴーグル越しに花織を見つめていた。その表情はとても真剣で、サッカーをしている時とも、普段話している時とも違う表情だった。花織は無意識に目を細める。

「あの時のことは忘れてほしい。あれは決して俺の本心ではない」
「どういう、ことですか?」

分からなかった。本心でない、それはあの言葉は嘘だったということか。もし……、もし本当にそうなのだとしたら。花織の推測は180度方向を変えることになる。鬼道は言葉を紡ぎながらふっと口元に柔らかい笑みを浮かべた。
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