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恋風

第14章 真実と疑惑




試合開始まではまだ少しだが時間があった。風丸は春奈に連れられて人気のない通路へとやってきていた。風丸と春奈は別段仲が良いわけではない。そのため自分がなぜ彼女に呼び出されたのか風丸はわからないでいた。

「風丸先輩、あの……。試合前にいいにくいことなんですけど」
「ああ、どうしたんだ音無」

小さな声で言葉を紡ぎ始めた春奈を風丸はじっと見つめる。いつもは自信満々で好奇心に輝く瞳が、今日は不満と悲しみで曇っているように風丸には思えた。そして……、春奈はここまで来ても少し何か迷いがあったようだが、キッと風丸を見上げて核心を口にした。狭い通路に彼女の声が響く。

「風丸先輩……、花織先輩と別れた方がいいと思います」
「え……?」

思いにもよらなかった春奈の言葉に風丸は一瞬呆けてしまう。それはどういう意味だ、自分が花織に釣り合わないからか。花織の行動が他から見れば納得のいかないものであるからか。それでもその疑問を悟られない様に穏やかな笑みで春奈を見つめた。さらりと彼の蒼い髪が揺れる。

「どうして、音無はそう思うんだ?」
「だって……。花織先輩は、お兄ちゃんとコソコソ何かしてるみたいだから。花織先輩、風丸先輩の想いに早く答えられるようになりたいって言ってたのに……。あの人と一緒にいて、風丸先輩の想いをバカにするようなこと言って……」
「お兄ちゃん……?」
「帝国の鬼道有人のことです」

風丸はその事実に驚きはしたが何も言わなかった。それよりも今は春奈の告げた花織への辛辣な言葉の方が彼の気にかかった。

風丸は目を細める。きっと今日の2人の行動を見てそう思ったのだろう。……正直2人の間で何が話されたかは風丸自身も知らないが、さぞ他から見れば仲睦まじく見えたのだろう。春奈の表情でそれがよくわかる。

「忠告は嬉しいよ、音無。でも変な思い違いはしないでほしい」
「思い違い……、ですか?」

ああ、と怪訝そうな表情を浮かべる春奈に風丸は頷く。微笑は崩さなかった。

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