第14章 真実と疑惑
「違うよ!!鬼道さんは春奈ちゃんのことを」
「先輩言ったじゃないですか!!……酷い振られ方をしたんだって。この人は一度は先輩のことが邪魔になったくせに、先輩が雷門にとって価値が出てきたから先輩の気持ちを利用しようとしてるに決まってます!!」
だがその言葉は遮られ、春奈の叫びに掻き消されてしまった。それでも花織も言葉を続けようとする。
「でも……っ、鬼道さんは!!」
「先輩には風丸先輩がいるじゃないですかっ!!」
突きつけられた究極の言葉にハッと花織は息をのむ、そして俯いた。
どんなことを言っても、どんな状況にあっても花織が鬼道と風丸2人の間で揺れていること……、悪く言えば二股をかけているという事実は変わらない。特にこの状況は春奈にとってみれば鬼道も花織も簡単に人を切り捨てるような残忍な人間に見えるだろう。
「もうやめろ、花織。時間がない……此奴に構っている暇はない」
鬼道が花織の肩を掴んで自分の方へと引き寄せる。その言葉と動作に春奈は唇をかみしめた。……自分が邪魔だと、間接的にだが彼女は言われたような気がしたのだ。じわりと春奈の目に涙が浮かぶ。
「貴方は……貴方はもう優しかったあのお兄ちゃんじゃない、他人よ!!」
春奈が絶叫する。そしてそのまま彼女は走り去ってしまった。握り締められた鬼道のこぶしがやるせなさにぶるぶると震えるのを花織は見た。しかしそれでも、鬼道は花織にそれを気取られないよう、寂しげにだが笑って見せた。
「行こう、花織」
「……鬼道さん」
花織が何か言おうと口を開いたが鬼道は花織の左手を取り、彼女の言葉を遮った。
「気にしないでくれ。……何も、問題はない」
そういって再び歩き出した鬼道の背中を見ながら花織は、鬼道の想い、風丸の想い、春奈の言葉を胸の中で反芻させる。ただただ苦しいこの感情に答えは見いだせなかった。