第14章 真実と疑惑
花織は鬼道と繋いでいた手を離すと、その空いた左手で春奈の手をそっと引き離した。
「ごめんね……、今はまだ戻れないの。鬼道さんとお話しすることがあるから」
「どうしてですか!?……決勝戦前なのに、先輩は雷門のマネージャーじゃないですか……。風丸先輩を傍で応援しようとは思わないんですか?」
春奈の言葉に花織はぐっと締め付けられるような胸の痛みを覚える。自分を鬼道へ引き渡した風丸を思うと本当に胸が苦しい。
しかし、だからこそ自分は鬼道について行かなければならなかった。昨日の出来事、鬼道と彼の父との約束、風丸と鬼道の約束すべてを包み隠して。
だが花織に隠すことはできても嘘をつくことなどができるはずもなく、この場を混乱させるだけの言葉を花織は叫んだ。
「……好きなの!私は、鬼道さんのことが好き。……今までずっと、一年以上前から好いてきた人だもの。鬼道さんの頼みを断れるわけない」
「……っ!?先輩の言ってた帝国の人がお兄ちゃん……?」
花織の叫びに春奈は動揺したようだった。じっと花織と鬼道の顔を交互に見つめ、吃驚を露わにしたような表情で呟く。しかしすぐに首を振って春奈は花織に詰め寄る。
「でもこの人は……!!鬼道家に行ってから、私たちが別々の家に引き取られてから、一切私と連絡を取ろうとしなかったんですよ!?たったふたりの兄妹なのに……っ。きっと私が邪魔になったんです」
春奈の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。鬼道の真意を理解していない春奈に、花織は思わず鬼道が知られたくないであろう言葉を勢いで言ってしまう。