第13章 鬼の道に有る人
――――花織ちゃんがいないから?
風丸の憂いには少しだけ推測の余地があった。この場所についたときに起こった出来事。花織が帝国学園のキャプテン、そして花織にとって恋心を抱き続けてきた相手でもある鬼道有人についていったことだ。あれが風丸にとって何かが心を蝕む原因になっているのかもしれないと秋は思う。しかし同時にこうも思った。
あの時花織は、鬼道についていくことを明らかに拒否しようとしていた。しかしそれを風丸が鬼道に強引に押し付けたようにも見えた。……どうして?風丸はいつも花織が他の異性と仲良くしているとあまりいい顔をするわけでもないのに。
花織の元気がなかったから?そういえば花織も今朝から調子がおかしかった。いつもなら笑顔で挨拶をくれ、いろいろな人の話を真摯に聞く彼女なのに、今日は違った。
落ち着きなくあたりを見回して、風丸の陰に隠れているように思えた。だからこそ、花織の鬼道に対する恋心を知っている風丸が花織を元気づけるために鬼道に引き渡したのだろうか。いや、そんなはずがない。それにそもそも花織が本当に落ち込んでいたのか、また落ち込んでいたとしてもその理由が全く分からない。
どうして、何が起こっているの?
秋には疑問ばかりが浮かんでくる。ボトルのふたを閉める手が止まった時、想い人の声が聞こえた。「顔、洗ってくる」……その声に秋は立ち上がる。そしてボトルをベンチにおいて円堂の後を追った。とにかく今は少しでも選手が不安としている何かを取り除かなければいけない。マネージャーとして、チームに何が起こっているのかもきっと知る権利があるはずだ。