第13章 鬼の道に有る人
「花織」
「はい、鬼道さん」
深く考え込む花織の名を鬼道が呼んだ。花織が顔を上げて鬼道を見れば、彼は優しく微笑んで握っている花織の手をさらにしっかりと握りしめた。どうしてこの人は私の手を握るのだろう、以前はお前なんかと振り払ったはずなのに。
「……案じるな、お前は必ず俺が守る」
どうしてこの人は私を想うような言動をするのだろう。私のことなど好いていないといったのに。
***
秋はどこかテンポの狂ったようなチームメイトの様子に疑問を抱いていた。ちらりと隣に立つ音無春奈へと視線を向ける。春奈はここへきてからずっといつもの元気がない。それに時々ふらりとどこかへ行ってしまう。表情も憂いを浮かべていて、遠くを見つめる目はどことなく寂しげだ。しかし、秋の心配はそれだけではない。
――――変なのは音無さんだけじゃない。
彼女の想い人、円堂守も先ほどから不自然なミスをしてばかりだ。手洗いから戻る前、彼のプレイは好調だったのにどうしてかその時からプレーに全くと言っていいほど冴えがない。
「しっかりしろよ、アップで怪我してたらシャレにならないからな」
突然、秋の耳に入った声に秋は声の主へと視線を向ける。……風丸一郎太。彼も今日どこかおかしいうちの一人。いつものように優しく頼もしい調子で壁山に声を掛けてはいるけれども秋にはそれは彼がそんなふうに取り繕っているようにしか見えなかった。ふとした瞬間、とても悲しそうな目をしている。