第13章 鬼の道に有る人
「鬼道さん」
振り返りもせず前を見て進む鬼道に花織が恐る恐る、それでも柔らかい声色で声を掛けた。
「随分春奈ちゃんに、その、素っ気なくなさるんですね。……妹さんなのに」
「!?……花織、どうしてそれを知っている」
鬼道の声が微かに震える。花織は先を行く鬼道を見つめて言葉を返した。
「土門くんに聞いたんです。……春奈ちゃんが鬼道さんのことをお兄ちゃんって、呼んでるのを聞いたって。……だから私、ずっと疑問でした。鬼道さんへ総帥が報復したいと思うなら春奈ちゃんを狙うんじゃないかって……。絶対に私よりは春奈ちゃんの方が鬼道さんにとっての人質にはなるんじゃないかって」
「それはないな」
花織の推測を鬼道はばっさりと言葉で切り捨てた。どうしてですか、と花織が問い返す前に鬼道が歩を進めながらも言葉を返す。
「確かに、春奈は俺の実の妹だ。俺たちは幼いころに両親を亡くし、別々の道を生きてきた」
「そう……、だったんですか?」
初耳だった。花織は鬼道の背中を見つめる。帝国学園在学時、鬼道とはいろいろな話をした。でも鬼道はそんなことは一切言わなかった。自分は鬼道家の一人息子でその名を背負っていかなければならないと彼が言っていたことはある。でもそれ以外ほとんど彼が自分の生い立ちについて話すことは無かった。
「俺は俺の父と約束をした。俺がフットボールフロンティアで三連覇を成し遂げたら春奈を引き取ってくれと。だからこそ俺は、総帥を信頼している父の言うとおりに総帥に従ってきた。もちろんそこに俺の意思がなかったわけではない」
あくまでも彼の父は影山総帥の汚い面は知らないというのだろう。花織は頷く。
「……いわば春奈は俺と父との交渉材料だ。その春奈に危害を加えれば、俺を懐柔するどころか父と総帥の契約が成立しない」
「……」
一応は合点がいった。花織は再び彼の言葉に頷く。しかしそれでもどうして春奈の次点に選ばれたのかがわからない。やはり雷門中の関係者で鬼道の知り合いだからだろうか。いやでも、知り合いごときで狙われるものか……彼の知り合いならいくらでもいるだろうに。