第2章 不思議な気持ち
他愛のない話をしながら通学路を歩く。帝国にいたときは仲の良い友達などほとんどいなかった。友達と一緒に学校に行くという中学生にとって当たり前の出来事も花織にとっては新鮮で自然と表情が綻ぶ。
「あ、そういえば昨日陸上部はどうだった?」
次々と出てくる秋の質問に花織は順を追って話していく。
先輩のこと、宮坂に練習しようと誘われたこと、風丸と走って彼の速さを実感したこと、風丸にまた走ろうと言われたこと、そして風丸が送ってくれたこと……。
花織の話に秋は酷く驚いたようだった。
「ええっ!!風丸君が?」
「うん。家まで送ってくれて。また一緒に走ろうって」
へえ、と秋が感嘆の息を漏らしながら首を傾げる。
「風丸くんって、女の子と話すの苦手だって聞いてたし、実際女の子と話すところはあんまり見たことないのに……」
「そうなの?……昨日はそんな素振りなかったけどな」
「円堂くんから聞いたんだけどなあ」
秋ちゃんの情報は円堂くんからくるらしい、2人の仲はよほど良いようだ。眉間にしわを寄せながら秋がやはりしきりに首を傾げている。
「そうなんだ……。でも昨日は普通に話してくれたよ」
花織が思い出す様に小さな声で呟くと秋はにこりと微笑んだ。意外と風丸は花織のことを気に入っているのかもしれない。一緒に走ろうと約束をするなんて、そうとしか思えないくらいだ。秋はそう思いながら鞄を持ち直す。
「それにしても風丸くん、相変わらず面倒見が良くて優しいんだね」
風丸くんの家、こっちの方向じゃないんだよ。秋はくすっと笑いながら花織にそう言った。秋がそう花織に言った瞬間、彼女の目が大きく見開かれる。一瞬で彼の昨日の行動が彼女の頭の中を駆けた。
どういう事だろう。彼は私を送るためにわざわざ遠回りをしてくれたということだろうか。
「あっ、花織ちゃん!」
秋が花織の名を叫ぶ。自然と花織の足は勝手に学校へと走り出していた。