第2章 不思議な気持ち
今守ってくれたのが、もしも彼だったら。花織はずっと焦がれている人物を思い描く。もしも彼だったら胸の中にこみ上げる感情は今と違っただろうか。
「月島?どうかしたか?」
「あっ!!ごめん、なんでもない……」
「そうか?」
花織は随分長々と考えていたようで、風丸の声に我に帰ればこのあたりは家のすぐ近くだった。風丸は不思議そうに花織のことを見ていた。
「うん……。あ、私の家ここなの」
「ああ、そうなのか」
花織が立ち並ぶ家のとある一軒の前で足を止める。彼との帰り道は色々あったが、意外と楽しかった。花織は風丸を見つめる。
「今日はありがとう。練習も一緒にさせてくれたうえに、家まで送ってくれて」
「いや、別に気にするな」
風丸が優しげに微笑む。花織は今日一番、彼に伝えるべき言葉を呟く。
「あの……、風丸くんと走れて楽しかったよ」
風丸に礼を言いながら微笑みを返せば、風丸の頬がまた赤く染まった。彼は照れ屋なのだろうか、という疑問を持ちながら花織は微かに首を傾げる。
「ありがとう……、それと、さっきは済まなかった」
目を逸らし頬を染めている風丸に花織はまだそのことを気にしていたのか、と苦く笑う。きっと真面目な人なのだ。風丸と話すたびに彼の良さに花織は惹かれていった。
***
翌日、花織はわけもなく早めに家を出た。とにかく学校に着いたらまず風丸に礼を言わなければ、とそればかりを考えながら花織は通学路を歩いている。
「月島さーん!!」
唐突に名前を叫ばれて後ろを花織が振り返れば、手を振りながら女の子がこちらへ走ってきている。確かあれは隣の席の木野秋さんだっただろうか。花織は足を止め、秋を待った。
「木野さん。おはよう」
「おはよう」
明るく朗らかに秋が微笑んだ。なんとなくその明るさを羨ましく感じながらも花織もつられて破顔する。
「ねぇ、一緒に学校行こうよ!」
「うん」
花織が頷けば秋はよかった、と安堵したように歩き始めた。
「花織ちゃんって呼んでいいかな?」