第13章 鬼の道に有る人
「春奈ちゃん……」
春奈だった。春奈は厳しい面持ちで花織へと伸ばされた鬼道の手を払って花織の前に立ちふさがる。
「花織先輩に触らないで。貴方なんかに先輩がついていくわけないでしょう」
強く厳しい声だった。兄に対する言葉とは思えない。だが花織の前に立っていた風丸がやんわりと春奈を押しのけて花織の背を押し、鬼道へと花織を差し出すようにする。ざわ、と円堂、豪炎寺以外の雷門中サッカー部メンバーが動揺の声を上げた。花織もそのうちの一人だった。
「風丸先輩!?」
「一郎太くん……!?」
あたりから彼の名を呼ぶ声がする。しかし風丸は周りの声は全く無視して真剣に鬼道を見据えている。花織の手を鬼道に握らせると低い声で鬼道に言う。
「鬼道、頼むぞ」
「ああ、任せてくれ」
鬼道は花織の右手を握り、歩き出す。花織はあまりの驚きに声が出なかった。半ば強引に鬼道に引きずられるといってもおかしくないような形で後ろを振り向けば、凛としていながらもどこか切なさを滲ませる風丸と目があった。しかしそれでも、花織は鬼道の手を振り払うことはできず、ただただ彼についてゆくしかなかった。