第13章 鬼の道に有る人
鬼道有人は厳しい面持ちで総帥の元へと向かっていた。今日の試合、何が起こるともわからない。昨日、花織に起こったことを考えれば何もないほうが可笑しい。鬼道は総帥を誰よりも信じ、誰よりも総帥に従ってきた。勝つことこそがすべて、敗者に価値などない。その総帥の考えに鬼道は惹かれていた。
この人についていけば、サッカーを極められると思っていた。しかし、総帥のしてきた今までのことを考えると今となってはその、鬼道にとって何よりの尊師であった総帥が信じられなかった。
鬼道が総帥の部屋の戸の前に立てば、自動ドアは勝手に開いてくれた。鬼道は歩を進める。無表情にモニターを眺める彼の師がそこには座っていた。影山は低く感情のない声で、鬼道に言葉を掛けた。
「何の用だ鬼道」
「俺は堂々と戦いたいのです。何も仕組んでいませんよね」
鬼道が声を張り上げる。雷門との試合、全力でぶつかりあうことを楽しみにしていた。しかし……この人はそれを許さなかった。それでも当日になってまで雷門を潰そうとしなくてもいいだろう。
帝国は今まで無敗だった、雷門に負ける気などもとよりない。鬼道はそう思っていた。しかし、総帥の言葉は鬼道の想いを裏切った。
「今まで通り、私に従えばいい」
その言葉は何か仕組んでいるのだ、という言葉と同義だった。鬼道は眉間に皺をよせ表情を険しいものとする。やはりこの人はどこまでも勝ちにこだわる。どんな汚い手を使ったって勝てばいいと思っている。鬼道はそれがもう許せなかった。過去この人について行こうとしていた自分も腹立たしいくらいに。
「失礼します」
毅然とした声で鬼道がくるりと影山に向かって背を向ける。その鬼道の背中に影山は言葉を投げかけた。
「天に唾しても自分に掛かるだけだ」
しかし鬼道は振り返ることもなく、総帥の部屋を出て行った。影山は鬼道を見送り低い声で呟く。その言葉はもう鬼道に聞こえてはいなかった。
「ここまでだな、必要とするのは逆らわぬ忠実な僕……」