第12章 瞳に映るのは
風丸は彼女が怖がらないよう、そっと花織の耳あてを取る。
「花織、俺だ。もう大丈夫だぞ」
そう風丸が花織に囁く。すると花織の身体のこわばりが微かに緩んだ。風丸は急いで花織の目隠しを外す。すると恐怖し、怯えた瞳が風丸の前に現れた。そしてそれは風丸を捕えるとボロボロと涙を零しはじめる。風丸は急いで花織の拘束具を外し、花織の身体に触れた。
「花織……」
「――――っ」
声にならない声をあげて花織は涙を流す。風丸を目に捕えた瞬間、彼女の中に温かいものが広がった。腕の拘束具の外された花織は風丸に縋りつき何度も一郎太くん、と風丸の名を呼びながらしゃくりあげる。風丸は優しく花織の身体を抱き寄せ、彼女を落ち着かせようと静かに背を撫ぜた。
「こわかっ、たあ……っ!」
風丸の肩に顔を埋め、花織が止まらない身体の震えを押さえながら泣きじゃくっている。
「どうした!?」
そこへ円堂が呼んできたらしい響木監督が円堂と一緒に3人の元へと駆けてきた。豪炎寺は2人を止め、2人に説明を始める。どうやら花織に気を使ったらしい。そして豪炎寺から見たままをひとしきり話として聞いた響木はいつものように表情では感情を悟らせなかったが、かなりの憤りを感じているように見えた。
「ひとまず店に来い。まだここは危ないかもしれんからな」
響木の言葉に円堂、豪炎寺、風丸が頷く。
「花織、立てるか?」
風丸が問いかければ、花織は立ち上がろうと足に力を込める。しかし、極度の恐怖と緊張から安堵という急激な心の変化があったためか、腰が抜けてしまったようだ。上手く立ち上がれないでいた。
「……たて、ない」
涙でぐしゃぐしゃなまま、泣きじゃくり花織が微かに呟く。それを見た円堂は手伝おうか、と2人の元へ歩み寄った。
「いや、円堂。……俺がおぶるから、ほら」
風丸が花織からそっと離れ、花織に背を向ける。そして自分の背へ乗るようにと促した。何とか花織を背に乗せて立ち上がる。ふと、風丸はその時、背中の辺りに規則的な振動を感じた。