第12章 瞳に映るのは
聞こえた声を手繰るように風丸が倉庫街への道へと飛び出す。そしてその異様な光景に一瞬足が止まった。
1人の雷門中学の制服を身に纏った少女が3人の黒服の男たちに囲まれ、車に押し込まれそうになっている。少女の顔は目隠しや耳あて、猿轡などが覆っていてはっきりとしない。だが、その少女の髪型・雰囲気で風丸は悟った。あれは花織だ……、間違いない。
「花織!!」
持ち前の俊足で彼女の元へと駆けだす。何が起こっているのかは分からない。この状況を打開する策だってない。ただ花織を助けなければその思いで走った。
「何だお前は、ぐおっ!!」
彼の走るスピードの勢いで男の内の一人に風丸はタックルを食らわせる。1人が倒れほか二人が怯んでいる内に風丸は花織の右腕をひいてそっと地面に座らせると自分の背に隠した。彼女を庇うように腕を後ろに回す。風丸に突き飛ばされた男は未だ立ち上がれないままだが、他2人が花織と風丸に迫った。
「この餓鬼……っ」
「ファイアトルネード!!」
「ぐほっ!!」
そのとき、2人に手を伸ばした男の身体が爆音とともに数メートル吹き飛ばされた。風丸は思わず目を見開く。吹き飛ばされた男はかなりダメージを喰らったようで酷くせき込んでいる。
「あまり無謀なことはするな、風丸」
「豪炎寺、……すまない」
未だ相手を睨みつけながら言葉を交わす。しかし、男たちはもうこちらへ歩み寄ろうとしなかった。
「くそっ……。ずらかるぞ」
「しかし、総帥に何と報告すれば」
総帥、その言葉に豪炎寺の眉が顰められた。まさかそれは帝国学園の総帥の事だろうか。だとしたら花織は初めから狙われていたのだろうか?
「仕方がないだろう……っ、作戦は失敗だ!」
そう言いながらすぐさま男たちは車に乗り込み、この場から姿を消してしまった。
「逃げた、みたいだな」
ほっと風丸が息を吐く。追いかける必要はない、どうせ車相手には追いつけやしない。それよりもまず花織だ。風丸は花織の方へ向き直り、しゃがみ込む。そして花織の身体に触れれば彼女はびくりと身体を震わせ、自由の利かない身体で風丸の手から逃れようとした。やはり酷く怯えているようだ。