第12章 瞳に映るのは
「総帥のいう勝利は実力の上に成り立つものじゃない。あなたは俺だけじゃなくチームのみんなを否定している」
「敗北は醜いぞ」
鬼道の意見はばっさりと影山の一言で切り落とされた。かつて嘲笑ってきたチームを思い出す。なりたくはない……、あんな風には。負けたくはない、しかし今の帝国が得てきた汚い勝利は欲しくない。実力で正々堂々とした勝利を望みたかった。
「お前もああなりたいのか」
影山は言いつつ、先ほどの雑誌に手を伸ばす。すると鬼道は血相を変えて雑誌を掴んだ。
「触るなあ!!」
部屋の端へと飛びのき、大事そうに息を荒げてそれを守った。そして抱きしめているそれが無事なことを確認すると、安堵した風にうすらと微笑みを浮かべる。その後にまるで何か悪いことをしでかした子供のように、影山に対して怯えの色を鬼道は見せた。
「思い出に縋りついていては弱くなるぞ、捨てろ」
両親の唯一の形見、有人としてのサッカーの起源だ。鬼道は背中に雑誌を隠して影山を見上げる。
「たとえ敗北しようとも、全力を出し尽くした勝負なら悔いはありません」
鬼道の答えが気にいらなかったのか、影山は大きくため息をついた。そしてサングラスに隠れた冷たい目で鬼道を見据えた。
「……最初の質問に答えていなかったな、俺はいったいなんです?と問いかけていた。お前は鬼道有人だ!分かるだろう……。そして私もお前に問いたいことがある」
じりっと影山が鬼道に歩み寄る。鬼道は一歩身を引いて影山の言葉を待った。どうにも嫌な予感がする、そしてそれは的中した。
「お前はまた私の命令に背いて小娘に会いに行ったな?金輪際、あの小娘には会うな。色恋も思い出と同じだ、自分を弱くするだけだ。……もっとも、もうあの女とお前が見える機会など2度とないかもしれないがな」