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恋風

第12章 瞳に映るのは


***

画面に映された己の試合、内容はすべて勝利を描いたもの。当たり前だ、帝国学園は40年間無敗だったのだから。雷門へ訪問した後からずっとこうやって過去の試合を見つめている。これがすべて偽物の勝利だったというのだろうか。鬼道はその時背後に気配を感じ、小さく呟いた。

「俺はいったい何なんです」
「考えるな、私やお前の父を失望させるな」

帝国学園総帥の影山が鬼道の見つめるテレビ画面の前へ立った。大方、鬼道の父が心配して影山を呼んだのだろう。彼の父は影山に対してかなりの信頼を置いていた。影山に任せていれば全て上手くいくとすら言っていたのだから。

「優れた才能を探していた時、施設でお前を見たときのことは忘れられない。わずか6歳でお前は既に完成された存在であった。お前は使える。だから跡継ぎを探していた鬼道財閥へ推薦したのだ。頂点に立つことが鬼道を継ぐものとしてのお前の義務であり、使命だ。他に何を望む」
「サッカーです」

鬼道は胸に抱いたサッカーボールを抱きしめる。鬼道のすべてはサッカーだ。サッカーですべてが決まってゆく。ほかに望むものはすべてサッカーで勝利することで手に入る。だからサッカーで勝ち続けたい、何よりも自分の力で。

いや、そうではない。ただ単純にサッカーが好きなのだ。ボールを蹴り、追いかけることが楽しい。サッカーをしていれば嫌なこともすべて忘れられた。

「ただやらせていたと思うのか。サッカーに置いて司令塔であること、これは多くの系列企業を束ねるお前の父がやっていることのシミュレーションだ。戦略を考え、思惑通りに選手を動かす。判断を誤れば敗北につながる。」

鬼道はズボンの膝元を強く握りしめた。シミュレーション……。俺のすべてはその程度なのだろうか。

「お前は勝つことで鬼道の名を継ぐにふさわしく成長してゆくのだ。……ん?」

影山がちらりと視線を鬼道の掛けるソファに置かれている雑誌へと向かった。その雑誌は古ぼけて薄汚れている。発行日は5年以上昔の物だ。影山の意識を逸らす様に鬼道が呟く。
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