第12章 瞳に映るのは
***
帝国からのスパイが消え、帝国と密通するものはいなくなった。しかし今の練習でも風丸は未だ疾風ダッシュを練習で封じ続けていた。花織はもう隠す必要はない、と風丸に言ったのだが、風丸は切り札は隠しておいて損はないと思うぜ、と笑った。
しかし今、雷門はフットボールフロンティアの出場が危機にさらされている。大会規約にて監督のいないチームは大会には出場できないということが冬海を追放したのちに発覚したのだ。監督を探すべく、全員であてを探しているのだが、先ほどは雷々軒を尋ね追い出されたばかりだ。雷々軒の店主は円堂の祖父の秘伝書の存在を知っている。そのため伝説のイナズマイレブンだったのでは……、という疑惑があるのだ。
監督が見つからない今、選手間でも何となくやる気が足りていない。壁山が恨みがましい目で円堂に縋りつき、とてもじゃないが練習どころではなくなっている。ふとその時、土門が足を止め、橋の上を見上げた。
「鬼道さん……」
「あっ」
土門の呟きに雷門イレブンが橋の元へと集まり始める。橋の上には私服姿の鬼道が立っていた。円堂が壁山から離れ鬼道の元へと駆け上がってゆく。下に集まった雷門イレブンの間では鬼道を非難するような言葉が交わされていた。
「偵察に来たんだな」
「不戦敗寸前の僕たちを嗤いに来たのかも……」
「どっちにしろ嫌な感じだぜ」
花織もそっと鬼道を見上げていた。どうしたのだろう、決勝前にこんなところへ来るなんて。花織は春奈の方へ視線を映した。春奈ちゃんの顔を見に来たのだろうか……。決勝前には妹の顔も見たくなるだろう。しかし花織が見つめた春奈の表情は鬼道を見据え、どこか寂しげなものであった。
「月島ー!!」
「え?」
円堂が急に大声で花織の名を呼んだ。チームメイトの視線が一気に花織へと集まる。花織は何故、円堂に名を呼ばれたのかが分からず動揺の表情をチームメイトに見せた。
「鬼道がさー!お前と話したいんだってーー!!」
何、どういう事?周りがざわざわとざわつき始めている。春奈は不可解そうな、そしてマックスと半田はどこか悟ったような表情を花織へと向けている。花織は俯き困り果てた。あの人とは会わないと、約束した。……だから。