第12章 瞳に映るのは
その言葉は鬼道の命令だ、と示唆しているに違いないものだった。言われてみれば納得がいく。鬼道が花織の電話番号を知っているのも、メイド喫茶での話を知っているのもすべて土門が報告していたからに違いない。
「でも鬼道さんが、どうして」
「俺は、鬼道さんは月島ちゃんが好きなんだと思うぜ」
土門は思ったことを素直に述べる。
「私は……」
「月島ちゃんが前に鬼道さんにフラレたってことは知ってる。でも好きでもないヤツの様子を、今も毎日のように確認するわけがないだろ。実の妹を差し置いて」
「い、もうと?鬼道さんには妹がいるんですか?」
初耳だった。いや、鬼道家の1人息子だと聞かされていた。
「ああ。……音無、みたいなんだ。鬼道さんの妹ってのは」
「春奈ちゃん!?」
花織は思わず大声を上げた。信じられない、2人に似ている部分があるようには思えないし、何より名字が違う。春奈も兄がいるなど、そんな素振りすら見せたこともない。
「今も総帥に従う鬼道さんの肩を持つわけじゃない。でも鬼道さんを応援していたチームメイトとして、鬼道さんの感じていた想いは誤解してほしくない。……特に月島ちゃんも鬼道さんが好きだったなら」
興味ないといったのだ。お前なんかと嗤ったのだ。しかし、この頃はまた帝国にいたときのように打ち解けた会話ができるようにはなってきている。それは鬼道の好意だというのか。花織は俯く、鬼道の真意は見えない。