第12章 瞳に映るのは
風丸が優しく、だがどこか切なげな表情で言う。
「……たとえ、真実がそうだったとしても。私がスパイについて黙ってたことは事実。……本当にごめんなさい」
「花織」
深く頭を下げた花織の肩を風丸が叩く。花織がそっと顔をあげれば、風丸は花織の髪に指を絡ませた。
「俺がお前の立場だったとしても、多分同じことをした。……それに不謹慎だが、少し嬉しいんだ」
風丸の言っている意味が分からず花織は首を傾げる。どういうこと?と花織は風丸に問いかけた。
「お前にとって俺が足枷になったのは情けない話だが、それでも俺がお前にとって人質に値する存在だったってことが……。馬鹿らしいことに思えるかもしれないが嬉しいんだ」
そう、たとえそれが鬼道からの命だったとしてもだ。
「だって……、一郎太くんは私の大切な人だから。当たり前のことだよ……?」
「ああ、それでも」
風丸はそっと花織の頬へと口付ける。彼女の美しい瞳に映る自分はやはり寂しげに見えた。自分はいつまで花織にとっての大切な人であれるだろうか。
「俺は嬉しく思う」