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恋風

第12章 瞳に映るのは



「一郎太くん、あの……」

部室裏に来たはいいが、花織は話を中々切り出せなかった。風丸はただ静かに花織を見つめ、彼女の言葉を待っている。

「ごめんなさい。……私、土門さんのこと」
「知ってたんだろ?……アイツがスパイだって」

か細い声で花織が言葉を紡ぎだすと、風丸は優しい声で助け船を出した。花織がえっと声を漏らし、顔をあげる。

「知ってたの……?」

花織は困惑する。彼は土門がスパイだと知っていたのか?花織が黙っていることを元より知っていたのだろうか。

「いや……、これで知ったんだ」

そういって風丸が差し出したのは白い紙、それは先ほど夏未が理事長室に送られてきたと言っていた告発文。すなわち土門からの手紙だった。それをどうして風丸が持っているのだろう。花織は微かに首を傾げる。

「さっき、雷門が俺に渡してきたんだ。貴方は彼女の為にも読むべきだって」

花織はどういう事かと疑問に思いながらも風丸の手から紙を受け取る。その手紙には冬海の策略、彼がしてきたことの謝罪などがつらつらと綴られていた。そしてその最後に付け足しのような言葉で短く花織のことが書かれている。

"月島花織は恋人をたてにスパイの黙秘を強要されていた。彼女はむしろ被害者だ。そして彼女の為にもこれはみんなには内密にしておいて欲しい。"読んでみると一目瞭然だ、土門は花織を庇ったのだ。

「俺の為だったんだな。……スパイについて黙っていたのも、新しい技を隠していようと言ったのも」

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