第12章 瞳に映るのは
「これが帝国のやり方なんですか!?総帥はいったい何を考えているんです!」
「……っ」
「なんか俺、もう総帥についていけなくなりました!あの人のやり方は強引すぎる。そんなにしてまで勝ちたいんですか!?」
土門が声を荒げるが、鬼道はただ低い声で返事をする。
「それ以上言うな。俺たちに総帥の批判は許されない」
「でも鬼道さんだって、月島に何かあったら嫌でしょう!?」
土門は咄嗟に花織の名を出す。彼女の存在を思い知らせれば、もしかすると鬼道が総帥を説得し、冬海を制することができるのではないだろうかと思ったのだ。
「アイツは関係ない」
鬼道は目に見えて動揺していた。土門は再び念を押す。
「でも好きなんでしょう?」
「……俺は総帥に」
2人は自分たちの話に夢中になっていて、もう一人の足音が近づいてくることに気が付かなかった。
「お兄ちゃん!!」
突然響いた厳しい声に土門は建物の影に隠れ、慌てて鬼道は振り返った。鬼道の背後には声と同じく厳しい表情をした音無春奈が立っていた。
「雷門中の偵察にでも来たの?」
春奈は鬼道に凄んで見せたが鬼道はそれを無視して歩き出す。そんな鬼道の腕を春奈はとっさに掴んだ。
「待って!」
「離せ……」
鬼道は春奈の手を振り払う。春奈は手を振り払われるとは思っていなかったのか、驚いた、そして傷ついたような表情を浮かべる。鬼道は視線を落として春奈に言葉を吐き捨てた。
「俺とお前は会っちゃいけないんだ」
そのまま鬼道は歩き出す。残された春奈は寂しそうな表情を浮かべて鬼道の後姿を見つめていた。
「音無と鬼道さんが兄妹……!?」
土門は開いた口が塞がらなかった。あの二人は似ても似つかない。きっと鬼道の右腕である佐久間や源田ですら知らないだろう。
いや、それよりも……。鬼道は妹や想い人がどんな目に合うのか分かっていながらも、総帥のやり方に従うことを選んだのだ。頼ることはできない。……それどころか共感することさえも。
――自分で何とかするしかない。