第12章 瞳に映るのは
「1つだけ忠告しておきます。……このバスには乗らない方がいい」
警告のような言葉を残して冬海はシャッターを潜り、車庫を出て行った。その残された言葉で土門は悟った。このバスに乗ったものが一体どうなるのか、その末路を。
「これが総帥の御命令か!」
やり場のない憤りを感じて土門はバスに怒りをぶつけた。
「くそっ!どうすりゃいいんだよ!」
***
鬼道有人は土門から修練場の個人能力データを受け取るために、雷門中の体育倉庫裏へとやってきていた。ここならきっと誰にも見つからないはずだ。誰かに姿を見られると厄介なことになる。
「ふ……」
ここへ来ると無性に会いたくなる人間がいるから困る。本当は今すぐにでも顔を見に行きたいくらいだが、それはフットボールフロンティアを優勝、いや3連覇を果たすまでは叶わない。また深く思いを馳せようとする鬼道の耳に一つの足音が聞こえた。足音は鬼道の凭れかけている壁の角で止まった。どうやら待ち人がきたらしい。
「イナビカリ修練場のデータは?」
低い声で問うた。相手は少しばかり何とも云わなかったが、きっぱりと答えた。
「まだ手に入ってません」
「……ならなぜ呼び出した」
今日の内、練習を抜けられた時に呼び出せと言っていたはずだが。土門の不可解な行動に鬼道は眉間にしわを寄せる。
「鬼道さん、本気なんですか?いくら何でもやりすぎですよ。移動用のバスに細工するなんて……」
非難するような声で土門が言う。その衝撃的な言葉に鬼道は目を見開いた。
「何だって……!」
「やっぱり鬼道さんも知らなかったんですね」
鬼道の驚愕を隠しきれない声に土門は何となく安堵する。鬼道が知っていて無視していたわけではないらしい。
だが鬼道の心は穏やかではない。確かに総帥は雷門を潰すことに執着していたが、まさかそんなことを考えているとは思わなかった。バスに細工すれば大事故になるだろう。
そんなことになればバスに乗るであろう雷門イレブン……、大切な人はどうなるだろう。無事で済むわけがない。