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恋風

第2章 不思議な気持ち




花織が眉根を下げて風丸を見つめる。花織が残って彼らの練習に付き合っていたのは自分の意志だ。彼がそんなふうに責任感を覚える必要は無いはずなのに。

「俺が心配だったんだ」
「……」

ふいと花織から視線を逸らしながら風丸が言う。ほんのりと彼の頬が赤く染まっていた。花織の身体が風丸の言葉に揺れた。どうして初対面の人にここまでできるだろう……、風丸は責任感が強すぎるのか、もしくは優しすぎる。

「……なんでもない。さぁ帰ろうぜ、家どこだ?」

なんだかんだで言い包められてしまった花織は風丸の1歩後ろを歩きながら彼の後姿を見つめる。¨心配だ¨という風丸の優しい言葉に花織の心はずっと波打っていた。どうしてだろう、その言葉で頭の中が埋め尽くされる。

「……」

そしてどうしてこれほど沈黙が続いているのだろう。校門を出てから今まで一言も2人は言葉を交わしていない。そしてこうも静かだと何となく気恥ずかしかった。

「……寒くないか?」
「うん、大丈夫」

たった一言交わした会話もすぐに途切れてしまう。それを嫌ったのか風丸が花織の方を振り返り、再び言葉を掛けた。

「あのさ、月島って帝国に居たんだよな?」
「うん」
「陸上やってたのか?」

¨その速さだったらもっと有名でもおかしくないのに¨そう言いたげな風丸が花織の表情を伺うように彼女の顔を覗き込んだ。花織は俯きながらも思い出すように呟いた。

「やってたのはやってたんだけど。……でも、帝国はサッカー部がすごいから、満足に練習もできなくて」

思わず、サッカーという言葉に顔をしかめる。花織はサッカーが好きではなかった。サッカー、サッカー……帝国ではサッカーがすべてだった。陸上や野球などグラウンドの隅に追いやられて練習は精々ランニングが関の山だった。そんな花織に風丸君は不思議そうに首をかしげる。

「サッカー、嫌いなのか?」
「い、いや別に……。そういうわけじゃないよ」
「そうか」

またもや会話が途切れる。花織の家まではまだまだ遠いというのに。やはり沈黙が辛かったのか今度は花織が風丸に話しかけた。
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