第2章 不思議な気持ち
あれから2時間……すっかり日は落ちて、あたりは真っ暗になっていた。涼しい春風が爽やかに吹き抜ける。全員で片付けを行いながら風丸は空を見上げた。
「すっかり暗くなったな」
「そうだね。そろそろ帰らないと」
同じ様に空を仰ぎ、花織が呟く。さらさらと風丸、そして花織の髪が風に揺れた。花織は自分の荷物を纏めて左手に持つ。そして風丸に丁寧に頭を下げた。
「今日はありがとう。片づけも終わったし、私もう帰ります」
「……送るぞ?」
風丸がちらりと花織を見てそういったが、花織は微笑んで静かに首を振る。
「いいよ。風丸君が遅くなっちゃう。ありがとう」
ひらひらと手を振りながら花織は足早にそこを立ち去る。きっとこのまま話していれば風丸は間違いなく花織を家まで送るだろう。花織はそこまで彼に甘える気はなかった。
静かに部室の戸をあけ、真っ暗な部室の中へ足を踏み入れる。電気をつければ質素な部室が眼前に広がる。花織はため息をつきながらジャージのファスナーに手を掛けた。運動部さながらの速さで着替えを終え、最後のヘアゴムに手を掛ける。さらりと長い腰ほどまでのロングヘアが揺れた。
ずっと伸ばし続けているこの髪、走るたびに揺れるこの髪が好きだった。小学生の時から……、伸ばす理由ができたのは中学の時だ。ずっと伸ばし続けている、あの人に対する叶わない想いのために。
花織が職員室へ鍵を返却し、学校を出るとあたりはすでに真っ暗になっていた。春風は昼間は涼しげに感じたが、この時間帯になるとむしろ少し肌寒かった。
「まだ結構、暗くなるの早いなあ……」
一人そんなことを呟きながらとぼとぼと歩く。ぼうっとしながら校門をくぐればさらりと揺れる蒼髪が花織の瞳に映った。
「あ……月島。遅かったな」
「か、風丸君!?どうしてこんなところに?」
花織のことを見て優しく微笑んだ風丸に彼女は驚いた。花織はそれなりに時間を掛けて支度をしてきた。加えて校舎へも寄り道をしてきたのに。なのに彼はどうしてまだこんなところにいるのだろう。
「……月島を待ってた。やっぱり遅くなったのは付き合せた俺のせいだからな」
「それでも……」