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恋風

第12章 瞳に映るのは




土門飛鳥は早朝、雷門サッカー部部室へと忍び込んでいた。鬼道からの命で今日の練習までにイナビカリ修練場の個人データを取得せねばならないのだ。音無や他マネージャーによって集められたデータが並べられた棚の中から件のファイルを探し、手に取った。この中身を鬼道に手渡せば彼の今回の任務は完了だ。しかし、土門は迷っていた。

地区予選一回戦からずっと共に雷門イレブンとして戦ってきたのだ。情が湧いてしまったのだ。それほど彼らと過ごすときは帝国での蹴落としあいとは違い、新鮮で個性的でそして何より楽しかった。もちろん、帝国のサッカーはチームワークを重視するサッカーなのだから部員間の仲が悪いわけではない。しかしどこか殺伐としている。

でも雷門のサッカーは温かいのだ。雷門でのサッカーはアイツとのサッカーを思い出せた。このチームでプレーするにつれ、いつしか帝国を忘れ、このチームでフットボールフロンティアを勝ち抜きたいと思うようになっていた。土門は一つため息をつくとファイルを元の場所へ戻し、そのまま部室を後にした。

天気は晴れ、雲一つない快晴だというのに土門の心はどんよりと曇ったままだった。このままでいいのだろうか、悩む彼の目に不審な影が映った。その影は遠征用のバスが置かれている車庫のシャッターを潜っていった。土門は訝しんで影を追い、シャッターを潜る。

車庫の中にはカラカラと地面と何かが擦れる音、そして何やら水音が響いている。何が行われているのか、きっとイレブンにとって害をもたらすことだが――。土門はこぶしを握る。するとすぐさま車庫の中に足音が響き始める。先ほどの影がこちらへと近づいてくるのが分かった。土門はその影の名を呼ぶ。

「冬海先生!」

土門が厳しい声で影の名を響かせた。影は一瞬びくりと身体を震わせたが、土門を一目見て明らかに安堵の表情を見せた。その影――冬海はどこか薄汚れて腕にはバケツを抱えていた。

「何だ君ですか……。脅かさないでくださいよ」
「こんなところで何をしてるんです?」

強い口調で土門が冬海に問う。冬海は彼と同じく帝国より派遣されたスパイだった。

「いえべつに。……あ、そうそう」

何事もないかのように冬海は土門の隣をすり抜ける。

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